セル(原題:CELL)

「セル」

セル [DVD]

あらすじ

離れて暮らす妻と息子に空港から電話をしていた作家のクレイ(ジョン・キューザック)だったが、携帯の電池が切れてしまう。すると、周囲で携帯電話を使用していた人々が突如凶暴化し他人を襲い始め、空港は大混乱に陥る。辛くも地下鉄へ逃げ込んだクレイは、車掌トム(サミュエル・L・ジャクソン)、少女アリス(イザベル・ファーマン)と協力し、暴徒の襲撃をかわしながら妻と息子のもとへ向かう。

Yahoo映画

 

レビュー

スティーヴン・キングの原作を、キング自ら脚本を手掛けた作品。

監督はトッド・ウィリアムズ

ジョン・キューザックサミュエル・L・ジャクソンイザベル・ファーマンらが出演している。

 

携帯電話を使っていた人が突然何らかの電波、あるいは音声により半ゾンビ化するという作品だ。

携帯電話に耳を当てると狂暴になり、自傷行為や狂暴化していない人間を襲ったりしてくる。

最序盤はテンポよく進み緊張感のある展開が続く。

だが進むにつれてテンポが良すぎるような印象を受けた。

無駄なシーンが少なく、必要な要素を淡々と映しているだけだ。

誰かが襲われるシーン、過去などのバックグラウンドを語るシーンなどは入れてくるものの、

いわゆる「遊び」の部分が無く淡々と進行する。

普通は物語の本筋には全く意味のない雑談や行動を少し入れることで、

キャラクターの性格面や世界の掘り下げをしたりするが、それが一切無い。

移動のシーンなどはほとんど描かれず数秒の風景を差し込むだけなど、

ぶつ切りで繋がりを感じられない所も多く感じる。

生存者も同行してはすぐに襲われて離脱を繰り返すのみ。

構成としてはあまり褒められるものではないだろう。

 

ストーリー上の謎もほぼすべて明らかにならない。

中盤以降、明らかな伏線として生存者の夢に出てくる赤いパーカーの男。

ラストまでちょこちょこ出てくるのだが、詳細は一切不明。完全にほったらかしである。

謎の電波によるゾンビ化についても詳細は一切語られない。

中盤以降、ゾンビ側がなぜか主人公のみをターゲットにして誘い出すような行動があるが目的は一切不明。

終盤、カシュワクという場所へ息子を助けに行く選択を取る主人公に対して、

自殺行為だ」とか「明らかな罠だ」とか言って引き止めようとするのだが、

これにはどうも納得できない。

そもそもカシュワクに関する情報が少なすぎて、

映像中には罠だと判断できる根拠は出てこない。

 

ラストシーンについても伝えたいテーマとインパクト重視で安易に考えた感が否めない。

なぜか大量の携帯人が電波塔の周りをぐるぐる回っている。

主人公を襲うわけでもなく、ただ壁を作っているだけ。

主人公の行動も意味不明だ。

円の中心にいた赤いパーカーの携帯人を倒してから、

徒歩で携帯人の壁を抜け出そうとしている。

壁が分厚く押し戻されてしまう主人公が、諦めたようにC4の起爆させようと携帯電話を開く。

息子を助けに来たわけじゃないのかと言いたい。

息子を助けるためならまず息子を探すのが最優先なんじゃないだろうか。

その後すぐ目の前に息子が現れるも携帯人となっていたので、自爆を決意する。

しかし、自爆する前に既に携帯人となってしまったらしく、主人公も壁の一人となりエンディング。

幸せな幻想を見てラストシーンを迎える。

 

 

この作品は携帯電話に依存すぎている現代の状況を批判したいという、

その一心で撮った映画だと感じる。

レビューを見るとエンディングシーンが意味不明だと書いているレビューがあるが、

どうみても深読みするようなエンディングではないだろう。

携帯電話に依存している人間は自分では幸せだ、便利で充実していると感じているが、

外から見ると(まともな人から見ると)意味のない行為を、

実体のない者(物)に繰り返させられているという滑稽な状態のように見えている。

作品全体を通して、ただこれを描きたかっただけであろう。

細かい設定などはすべてほったらかしなので、

少しはエンタメとして楽しめる要素を入れておくべきだろう。

芸術的な映画だとか持ち上げているレビューもあるが、

原作スティーブン・キングの名前に引っ張られすぎである。

有名俳優に有名原作者だからといって持ち上げる必要はない。

 

まとめると序盤の数分は引き込まれるものの、

それ以降は右肩下がりで面白さが無くなっていく。

特に良い点も無く、観て後悔するような作品であった。

YOU ARE NEXT ユー・アー・ネクスト (原題:Sneekweek)

「YOU ARE NEXT ユー・アー・ネクスト」

YOU ARE NEXT ユー・アー・ネクスト [DVD]

 

製作年2016
製作国オランダ
ジャンルホラー/スリラー
メレルカロリーン・スプーア
ティムフェリー・ドゥーデンス
ボリスヨルド・ノッター
リサホリー・ブロート
タイスイェル・デ・ヨンク

 

あらすじ

大学を卒業したメレルは、バカンスを過ごすため同じ寮に暮らしていた仲間たち男女6人でリゾートにやって来た。宿泊する貸別荘が思いがけず豪華で喜ぶ彼女たちだったが、いざ到着してみると誰がそこを手配したのかはっきりしない。細かいことは気にせず休暇を満喫する皆だったが、メレルはひとり悪夢にうなされる。実は、彼女たちはかつて新入生に過酷な入寮テストを課し、ひとりが命を落とした事実を隠蔽していたのだ……。

WOWOWオンライン

 

レビュー

邦題は「YOU ARE NEXT ユー・アー・ネクスト」となっているが原題は「Sneekweek」

よくわからなかったので調べてみたが、スネークウィークというのはどうやら

オランダのスネークという町で行われるウォータースポーツイベントのことのようだ。

日本語でネット検索してもヒット件数は少なく、日本における「Sneekweek」

知名度が無いことは明らかであるため、邦題を付けることになったのであろう。

しかし同じくホラー映画である「サプライズ」の原題も「YOU ARE NEXT」であるため、

若干ややこしくなりそうだ。

どうせなら別の邦題を考えてほしかった。

 

内容については過去の有名ホラー作品の定番ネタを

これでもかというほど盛り込んだような作品だ。

そのため、極端に悪いというわけではないものの、何かが良かったという点もほぼ無く、

オープニングからエンディングまで低空飛行を続けたような印象だ。

大学生達が明確な殺意は持っていないものの人を殺してしまい、

その場にいた仲間達が隠蔽工作をして成功。

そしてその後もその秘密を隠し通すが、ある日突然襲われ仲間達が次々と殺されてしまう、

といったシチュエーションは「ラストサマー」が一番に思い浮かぶだろう。

その他にも随所に観られる演出もホラー好きならば

安易に予想できてしまうような陳腐なシーンが多くあり退屈であった。

もはや様々なホラー映画からそのままパクっていると言っても過言ではないレベルなのである。

 

冒頭は大学の入寮テスト?として、氷の入ったプールに入り我慢比べをして、

最後まで残った人物を選ぶというテスト行う。そしてそのうちの一人が亡くなってしまう。

そしてその場にいる全員が隠蔽する選択を取り、事故扱いとなる。

ここでは途中で局部の大きさを測るなどの精神的な攻撃も行われており、

登場人物の大学生は例外なく卑劣な人間であることが開始早々に描かれてしまい、

登場人物に魅力が感じられなかった。かといって復讐を考えている側の登場人物に魅力があったとも言えない。

 

またスプラッターシーンも描写が甘く、特に斬新なものも無く、

ど派手な描写というわけでもなく、

ほとんど印象に残らないような中途半端なものであった。

殺人鬼側も凶器に工具を好んで使うが、トドメを差しきれていなかったり、

工具を使うポリシーがあるのかと思っていたが、

途中でナイフ?包丁?を使うなど理解できない面が多い。

そして最終的には冒頭であれだけ外道な印象付けをされた

主人公集団のうち2人は生き残ってしまうのである。

 

極めつけはラストシーンだ。冒頭で死なせてしまった大学生の母親の元へ、

生き残った主人公の1人の女性が謝罪に行くというシーンでエンディングを迎える。

謝罪中に一切返答が無いことを不審に思い顔を覗き込むと、

母親はなぜか目が真っ黒になっており、

いきなり大口を開けて「グワァー」と低い叫び声をあげる。

完全に意味不明である。

ここまでオカルト要素は皆無だったが、急に悪霊や悪魔が取り憑いたかのような描写。

(目が真っ黒、かつ異様に低い声から推測。)

何かのパクリかとも思ったが、唐突過ぎて何からパクったのかもわからない。

適当に観たホラー映画であったシーンをそのまま再現してしまったのであろう。

正直深読みも出来ないレベルだし、したくないレベルである。

 

細かいツッコミも多い。

大怪我を負ったキムがあっさり退院してしまったり、

犯人を棒で突くとあっさり気絶してしまったり、

額にネイルガンを打たれてもピンピンしていたり、

そもそも冒頭のシーンにあった、

低体温症での死亡を偽装などは出来ないのではないだろうか。(医学知識は皆無だが…)

 

良かった点はEDMと、別荘からの風景お色気シーンぐらいだろうか。

EDMは好きじゃなければ特に魅力となる事は無いだろう。

トウモロコシと思われる畑の風景は美しいのだが画面に映る頻度は低い。

セクシーなシーンは数が多いものの、クオリティはそれほど高くないため、

惹かれるようなシーンは少なく、とりあえず露出を多めにしたという印象が残る。

またホラー作品であるため当然といえば当然だが、

男性向けのセクシーシーンは多いものの、女性向けのシーンは少ない。

 

上映時間は113分となっている。

正直2時間近くもこの映画に時間を取られてしまったのは不快だ。

オランダでは大ヒットらしいが、本当ならオランダ人の感性を疑ってしまう。

ソイレント・グリーン SOYLENT GREEN

「ソイレント・グリーン」

ソイレント・グリーン 特別版 [DVD]

あらすじ

2022年、爆発的な人口増加と環境汚染に見舞われたニューヨーク。合成食品ソイレント・グリーンの製造会社社長が殺された事件を捜査する警官は、背後に食糧危機打開のための政府の陰謀がある事を知る……。

レビュー

1973年公開のSF映画。
舞台は2022年のニューヨーク。人口が爆発的に増えてニューヨークだけで4000万人の市民がひしめき合う。

極端な人口増加とそれに伴う食料不足などの問題が起因となり大規模な自然環境破壊がもたらされた世界。
そのため夜間外出禁止令や食料や飲料水の配給制などの極端な管理社会(ディストピア)となっているようだ。

また肝心の食料は動物も植物もほぼ壊滅状態のようで、一般市民は基本的に合成食品会社ソイレント・グリーンの合成食品しか食べることは出来ない。
「ソイレント・グリーン」「イエロー・ソイレント」「ソイレントパン」などのバリエーションがあるらしいが味は無いらしい。
前半では主人公ソーンが「本」のソル・ロスと一緒にリンゴやレタス、シチュー?のような物を食べるが、ソーンは合成食品以外の食事はこれが初めてだったようだ。

警官であるソーンはソイレント・グリーン社の社長が殺された事件を捜査していく中で「ソイレント・グリーン」の秘密を探る。

用語解説

この作品には独特な言い回しの単語がある。作品中には明確な説明は一切無い。
観ていくとわかるようにはなっているものの、序盤はよくわからないだろう。

家具その家に付属している女性のこと。
住居のオーナーの所有物で、入居者が自由に使うことができる。
文字通り家具として扱われ人間としては扱われない。
またそのような待遇は当たり前のようだ。
多くの知識を持った老人のこと。
また読み書きが出来て、なおかつ本を読み理解することが出来る知能を持っている。
上記の「家具」と同様、基本的には人間扱いではないようだ。
ホーム安楽死施設のこと。
自然が豊かな頃の映像と音楽を聞きながら安らかな眠りにつける。
交換所情報交換所のこと。
沢山の書物と「本」が集まっている。
文字通り情報を交換する場所。

人口爆発やそれに伴う急激な食料の需要の高まりと雇用問題、

科学の急激な発展速度と経済優先で自然環境を考慮しない経済活動による自然環境破壊。

1973年にこれらの問題提起を描いた作品だ。今から45年前の作品である。

さすがにあと4年ではこのような惨状にならないであろうが、遠い将来にはありえないとまでは言えない恐怖がある。

 

全編を通して色の無い、鬱屈とした希望のない雰囲気を上手く醸し出せている。

服装も華美な物は一切無く、色味もやたらと地味だ。

さらに植物がほとんど無いことで地球上はやたら暑くなっているらしいが、

登場人物はほとんどじっとりとした汗をかいており、蒸し暑さがダイレクトに伝わってくる。

このような描写から否応なしに切迫、困窮した世界を感じさせられる。

 

特にインパクトのあるシーンとして、パッケージの画像にもなっているショベルカーで人間をすくい上げて荷台へ投げ入れるというシーン。

個人一人一人を人間と思っていない様を上手く描いているといったシーンだ。

また「ホーム」と呼ばれる安楽死施設には行列が出来てしまっている。

さらに「家具」や「本」という呼称など、随所に人権を無視した描写を入れ、狂った世界設定を強調している。

 

こういった暗澹なシーンとは対照的にソーンとソルとの食事のシーンはとても美味しそうに幸せそうに食べるのである。

質素な料理とも言えないようなレベルの食事なのだ。おまけに部屋も汚く食器も簡素なプラスチック製。

しかしここまで美味しそうに見えるのは、ここに至るまでの過程で、困窮した生活感、雰囲気といったものを演出出来ているからではないだろうか。

もちろんチャールトン・ヘストンとエドワード・G・ロビンソンの演技力も大きな要因だろう。

食べ終えた時のゲップからの笑い合うシーンは

こちらまで幸福感が移ってきそうで自然と頬が緩む。

数少ない笑顔のシーンとしてはインパクトがあるシーンだ。

全編を通して食材について話した時とこの食事中のみ登場人物に笑顔がある。

またBGMの少ない映画ではあるが、ここでは陽気なBGMが流れるのもしっかりと場面を導入してくれる。


 

このような設定と描写は良いのだが、一つ気になってしまった。

植物はほぼ絶滅しかけており、さらにプランクトンも絶滅したということが後半にかけて判明する。

そうなってしまえば、もう水も食料も循環出来ず、大気(酸素)も維持出来なくてすぐに人間も絶滅するのではと思ってしまった。

 

またラストシーンでは食用人間の飼育について言及するのだが、それはありえないだろう。

「人肉が食料になれば次は食用人間の飼育だ」

既に亡くなってしまった遺体を食用へと転用するのはまだ意味がわかる。

しかし食用として飼育するにはコストがかかり過ぎるのではないだろうか。

人間が食用とするものはほとんど人間には食べられないもの(食べにくいor栄養吸収しにくいものor身体に悪影響が出るもの)を

栄養として吸収して肉や果実、種や葉といった人間が食べられる物に変換してくれるのである。

もちろんあえて人間が食べられる食べ物を飼料として使うこともある。

だがこの世界ではそんな事はやっていられないだろう。

人間が食べられる物は食用人間に与えるより、自分で食べた方が圧倒的に効率が良いからだ。

おまけに人肉を食べると病気になってしまうことも判明している。(ソイレント・グリーンを製品化出来ているのでこれはクリアしているかもしれないが)

やはりこのセリフは無い方が良かったのではないだろうか…。

 

概ね満足した映画だったのだが、ラストシーンにわずかにあるアクションシーンは素っ気ない。

不満とまではいかないが、45年前の映画とはいっても、やや淡白すぎるような気がする。