サバイバルファミリー

「サバイバルファミリー」

サバイバルファミリー DVD

公式サイト http://survivalfamily.jp

監督 矢口史靖
出演 小日向文世, 泉澤祐希, 葵わかな, 深津絵里

登場人物

鈴木家 父・義之(小日向文世)、母・光恵(深津絵里)、息子の賢司(泉澤祐希)、娘の結衣(葵わかな)

予告編

 

あらすじ

東京に暮らす平凡な一家、鈴木家。さえないお父さん(小日向文世)、天然なお母さん(深津絵里)、無口な息子(泉澤祐希)、スマホがすべての娘(葵わかな)。
一緒にいるのになんだかバラバラな、ありふれた家族…。そんな鈴木家に、ある朝突然、電気を必要とするすべてのライフラインが完全にストップするという緊急事態が発生する。
果たして、サバイバル能力ゼロの平凡一家は電気がなくなった世界で生き延びることができるのか!

 

レビュー

全体の評価としては雑な作りという印象を受けた。
映画のタイトルにサバイバルと名付けたのだから、もう少し現実的に描いてほしかった。
無茶な描写が多く見受けられ、これではファンタジーすぎるように思える。
後述するのだが、監督は都会の人間が、たいして目算も立てずに突然脱出だと言って家を飛び出したら、どんな目に遭うかということが、観客に体験してほしいことでした、と述べている。
だったらもうちょっとリアリティが欲しい。普通ならこの一家は何回かは死んでいる。

そしてこの映画のジャンルはコメディとされているのだが、全体を通してシリアスとコメディが入り混じっている。
そのバランスが良いという人もいるのだろうとは思うが、うろたえる人々の滑稽さから、
水を盗むなどのシーンがあったかと思えば、飼い犬を置き去りにして逃げる家族や、
律儀に食料を分けて助け合ったりなど、チグハグだと感じる場面や状況が数多くあった。

主要キャスト(鈴木家以外)のほとんどの役者の演技がひどすぎる。特にマンションでの集会のシーンなんてひどいなんて物ではない。
そのシーンは構図などの演出も含めて急にクオリティが低くなっていると感じる。小学校の学芸会を彷彿とさせるような演技でこっちが恥ずかしくなってくる。

細かいツッコミ

※こういう事は監督が描きたいものではないという事はわかったうえで敢えて書いています。
※書ききれていないものもあります。

  • 原発がメルトダウンして大事故を起こすはず。
  • およそ3時6分頃に謎の現象が発生したようだが、どこも交通事故等が起こっていない。

—時系列順の細かいツッコミ—

-初日~2日目
街中で停電となり、全ての電化製品が使用不能になっている。
電池を使っている物もすべて使用不能になっている時点で太陽フレアしかないと思うのだが、それほど馴染みのない事柄だろうか。
停電だとか、オーロラがどうだとか、通信網が破壊されるなどというニュースは近年は数年おきに目にすると思うのだが…。
まあ最後にすべて復活するので太陽フレアではないのだが…。

夜中に一家で星空を見上げるシーンでは娘・結衣が「天の川って実在するんだ!」と言う。
これは流石にに今どきの高校生をバカにしてるような描写ではないだろうか。

-3日目
初日は父・義之は出社、娘・結衣と息子・賢司は登校するが、こんな事態でもほとんどの人は出社したり登校したりはするだろうなとは思う。
ただ3日目以降も出社・登校していられる場合では無いと思う。あまりにも非現実的すぎる。

ここで息子・賢司は片思いしていると思われる中村里美の家に向かうが、友人の男と一緒にいるところを目撃してしまう。
賢司が知らないだけで、家族ぐるみ?で付き合いがあったようだ。
そしてこのシーン以降、里美やその彼氏どころか、この話題自体一切出てこないのである。
このシーンは何のために撮ったのだろうか、疑問が残る。
あと里美の住所確認のためのはがきには「崎玉県」と書かれている。埼玉は元々はこの漢字らしい。
しかしわざわざこの漢字を使った意図や思想があるのだろうか。ちょっと気になる。

-7日目以降

マンションの集会シーン後、父・義之は空港に向かうと言い出す。
信じられない。まともに電気も使えず苦労しているのにその発想はなかなか出て来るものではない。
本当に動いてると思っているならどうかしてる。
またいざ出発するシーンで父の「今更つけまつげなんていらないだろ~」というセリフと、
その直後の徐々に水の値段が高くなっていき、最終的に母・光恵が値切るシーンはコメディらしくて好印象。

自分は知らないのだが、東日本大震災では関東・東北はこのような状況が本当にあったようで、当時を体験した人には笑えないだろうとは思うが。

最初の2~3日は大丈夫かもしれないが、そろそろ略奪や物資の奪い合いによる死傷者が出る頃だと思われる。
一家はPA付近で野宿をするが、夜中に水を1本取られてしまう。
が、さすがに野宿なんかしてたらただでは済まないだろう。水1本で済むわけがない。

トンネルのシーンでは白杖をもった盲目の老いた女性達がトンネル渡しをやっており、中には止まった車や狸の死骸があるのでロクに進めないらしい。
長さは2.5キロ。さすがに明かり無しでは厳しいが、その対価はお米か水、どちらも貴重である。火を起こして照らすという考えは無かったのだろうか。
そして盲目の老いた女性の集団なんて真っ先に襲われる対象になるのではないだろうか。
もちろんコメディであり、監督もそういった血生臭い事を描きたいわけではないのはわかる。
わかるのだがどうしても気になってしまう。

-16日目以降
川の水を飲み、下痢になる父・義之。飲める水が無い状態で下痢になんてなったらあっという間に死んでしまうのではないだろうか。
幸い、キャットフードとバッテリー用の精製水を獲得したので生き延びられたのだろう。

-22日目
ここで飲水が枯渇。次の場面では大阪に到着して43日目となる。

-43日目
22日目辺りで無くなった飲水。どうやって生き延びられたのだろう。
その後、水族館で展示されている魚などを使い、炊き出しを行っている場所を発見する。
しかしちょうど目の前で全て終了して食事にはありつけない。
だがしかし、ここで既に電化製品が使えなくなって43日間経過している。装置による維持やエサなどの世話が無い状態で生きられる魚類はどれだけいるのだろうか。

-67日目
どうやってここまで生き延びられたのだろうか…。少なくとも22日目からまともな飲水はないが、一家は元気そうでなによりだ。

ここでは一家が養豚場から逃げたブタを偶然見つけて捕まえる。しかしすぐにそのブタを所有する養豚場の老人に見つかってしまう。
この老人は家事の手伝いやブタを捕まえる手伝いをさせるために自分の家へと連れていく。
そしてこの老人は最後に一緒に住まないかなどと提案する。はっきり言って正気の沙汰ではない。
自分のブタを勝手に殺されたものの、その家族4人に水と食事と寝床を提供する。
人が良すぎる、純朴だなどという言葉では説明できないほどの人物になってしまっている。

-94日目
貰ったお肉を食べながらレールの上を歩く一家。
ここで犬が1匹現れるのだが、なんと娘・結衣はそのお肉で犬を呼び寄せようとしているのだ。
極限まで飢餓を経験しているはずなのだが、この期に及んでもまだ危機意識が無いらしい。

結果的にお肉は取られてしまい、今度は犬の大群が現れてピンチ!
というときに謎の蒸気機関車が出現。なぜSLが走っているのか…。

そしてその後、はぐれた父・義之と再会。
義之は線路の近くでぐったり、走行中のSLを見つけ、持っていた発煙筒を振る。
車内にいる母・光恵が運良く見つける。
フィクションなのでご都合主義は多少なりとも受け入れられるが、流石にこれは奇跡すぎる。

-108日目
鹿児島についたようだが、なぜ真っ先に海岸に向かったのだろうか。
まあ海岸での再会のほうが画としては良いとは思うが…。

映画を観終わって

コメディなのでリアリティが無いなら無いでも良かったのだが、あまりにも突飛な演出、つなぎ方で物語の中に入り込めない点がよろしくない。
また登場人物の頭を悪くすることによってどうにか組み立てた・構成した感がある。

『サバイバルファミリー』矢口史靖監督インタビュー「“水族館=魚介類バイキング”という長年の夢が叶いました」http://top.tsite.jp/news/cinema/o/37700244/index
サバイバル能力や知識、ツールも持っていないであろう都会の人間が、たいして目算も立てずに突然脱出だと言って家を飛び出したら、どんな目に遭うかということが、観客に体験してほしいことでした。

監督はインタビューでこう答えているが、
都会の人間を馬鹿にしすぎであると同時にリアリティが無いというのは一貫性に欠けると思われる。
登場人物の頭を悪くして描く手法は適度に使うなら良いが、やり過ぎるとストーリーの没入感を妨げてしまうと感じた。

 

作品のテーマとしては家族の絆の大切さや、食料の大切さ、現代の日常に当然のようにある利便的な生活にありがたみを持てということを伝えたいのかと思ったが、少なくとも当初はそうではなかったらしい。

矢口史靖監督が語る、『サバイバルファミリー』の裏側と独自の製作スタイル「発見がなきゃつまらない」
http://realsound.jp/movie/2017/09/post-110417.html
急速にデジタル社会になっていったけど、それによって何か大事なものが、どんどん欠落していくような気がしたんです。だったら、「いっそ無くなったほうが、人は幸せになるんじゃないか?」と。そういう強引な発想がスタートでした(笑)。

まあ焦点は家族であり、色々と野暮なツッコミを入れているということは重々承知ではある。
コメディー映画なのであって厳密なポストアポカリプス的なサバイバルではないというのは予告編からもわかる。
しかしそこに重点を置いていないとはいえ、登場人物が平和ボケしすぎていてリアリティがないというのは感情移入を妨げると思う。
そして予告編ではコメディ全開なのだが、本編ではコメディとシリアスなシーンが入り乱れており、
個人的には両方が上手く噛み合ってないような気がする。
もっとコメディに全振りするかシリアスに全振りするかしてほしかった。

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